エキスパンションジョイントカバー


免震エキスパンションジョイント


免震エキスパンションジョイントの維持管理と点検について

1.点検時期について

免震エキスパンションジョイントの性能をいつでも発揮するためには、維持管理としての点検を怠ってはならず、周期的に点検を行うことが必要です。点検時期としては、建物の免震維持管理基準に準じて、竣工時検査・定期点検・応急点検および詳細点検などがあります。

定期点検は、日常的変化または経年変化に起因する異常がないか調べ、応急点検は、大地震・台風や火災・洪水などの災害を受けた直後に、災害による影響の有無を調査する点検です。ここで、点検の基準とする地震レベルは、当該建物の建設地近傍の地震震度によって判断されますが、中地震程度でも変位が大きい場合があることにも注意が必要です。詳細点検は、定期点検や応急点検時で異常が見つかった際に実施する点検です。各点検時期の概要について表1に示します。


表1 点検時期
点検時期 実施者 点検の目的
竣工時検査 竣工時 専門技術者
(工事監理者立会)
正しく施工され作動に支障がないか確認する。
定期点検(1) 1年に1回程度
(状況に応じて、関係者協議により簡略化、省略可)
原則、専門技術者 異常の早期発見と事故の防止を図るために、製品やその使用状況を確認する。
日常的変化または経年劣化に起因する異常がないか調べる。
定期点検(2) 竣工5年後、10年後、以後10年毎に実施 専門技術者
( 製作者の立会が望ましい)
異常の早期発見と事故の防止を図るために、製品やその使用状況を確認する。
日常的変化または経年劣化に起因する異常がないか調べる。
応急点検 大地震や台風・火災・洪水などの災害発生直後 原則、専門技術者
(設計者または施工者対応可)
大地震や台風・火災・洪水などの災害を受けた直後、速やかに製品への影響の有無を確認する。
詳細点検 定期点検や応急点検で異常が発見された時 製作者
(設計者または施工者立会が望ましい)
異常が発見された箇所の原因究明を行う。


2.点検部位・項目

【点検部位】
免震エキスパンションジョイントは、屋内外を含め床、壁、天井などに設置されており、また免震層の階のみならず上階を繋ぐ渡り廊下のような特殊な部位にも設置されている場合があります。
点検部位を図面にハッチングなどをした資料を作成することで、以後の点検を適切に行うことが可能となります。

【点検項目】
各部位の免震エキスパンションジョイントの点検には、可動状況、損傷状況、劣化状況及び密閉状況を踏まえ、下記の項目などがあげられます。

それぞれの点検項目については、各点検時期により点検の要否は異なり、免震エキスパンションジョイントの設置状況や、設置環境により、点検項目を選定することが望ましいです。

上記の点検部位・項目をもとに、免震エキスパンションジョイントの維持管理時に注意すべき事項は、『免震エキスパンションジョイントの可動図』に記載した内容を確認してください。いずれも、正常に挙動するのを妨げる要因となりうる内容が示されています。このように、免震エキスパンションジョイントの機構により地震時の挙動が異なるため、作動した際の挙動を図解したものを保存することで、維持管理時の機構の確認や障 害物のチェックが容易となります。


3.点検方法

点検は原則として専門技術者や免震建物点検技術者有資格者が実施するものとし、点検を行う際には目視による検査が基本となりますが、劣化が進みそうな部位においては、異常の早期発見のために打診による検査を行い、また、必要に応じて仕上材を外して機構を確認するなど、機能の要となる部分を点検することが望ましいです。
なお、必要に応じて障害物が可動域にかかるか否かを計測により確認します。また、点検において異常が発見された場合には、本体パネルや部品を外して詳細点検を行うことが必要です。
各機構の点検方法に共通する留意点としては、以下の事項があげられます。


外壁部の場合の例


また、特に居住空間の一部分に免震エキスパンションジョイントが設置される場合、建物利用者があやまって可動範囲に障害物を置かないよう、建物管理者への取扱説明書などを配布し、障害物がないか常時注意してもらうなどの処置も大切です。
そのため、点検方法について参考例を記載したり、各機構の挙動と点検上の留意点を図に示すことが望ましいです。

ここに、各点検時期における点検項目および判断基準を表2に示します。

表2 定期点検要領
点検内容 点検項目 点検方法 判定基準 点検時期
竣工時 定期(1) 定期(2) 応急
可動状況 障害物の有無 目視 可動域に障害物がない
損傷・劣化状況 作動機構※ 目視 機構、作動上問題がない (○) (○)
仕上材、シーリング 目視 有害な劣化がない
鋼材の発錆 目視 著しい赤錆、浮錆がない
取り付け部の躯体状況 目視 亀裂などがない
残留変形 目視 有害な変形がない
密閉状況 漏水 目視 漏水していない (○)
※ 作動機構:変状(たわみ、ひずみなど)、ボルト・ナット類の取り付け状況などを確認する
( )は状況や必要性に応じて点検する。


免震建物点検技術者とは、一般社団法人 日本免震構造協会が定める「免震建物の維持管理基準」に基づき、免震建物の維持管理点検業務に関して、必要な能力を有する資格者のことです。

免震建物点検技術者登録証



一般社団法人日本免震構造協会発行「 免震エキスパンションジョイントガイドライン」
第7章 維持管理上の留意点より抜粋